「その中で、疑問を感じられたのですね」
そうですね。メディアの仕事をさせていただいたおかげで、多数決の情報には惑わされない姿勢ができていたのは幸運でした。商業的な情報か医療情報、それも病理の情報しかないことには違和感がありました。
そんなことよりも、妊娠・出産の「人生の出来事としての情報」や、「出産を通して女性はどう成長できるのか」、「夫婦から両親になる時には何をマネジメントすればいいのか」、そこが知りたい。そのためには医療者とどのようにコミュニケーションをすればいいのかも知りたくて。
欲しくて、欲しくて、それでも見つからないうちに、お腹はどんどん大きくなる。出産予定日は近づく。その時の渇望していた強い気持ち。それが今でも仕事の原動力になっています。
「それでは、妊娠された22歳がターニングポイントでしたね」
はい。妊娠していた当時、呼吸法のラマーズ法が大ブームでした。私はそこに夫婦で参加したんです。
それが本当にすごく楽しくて。与えられた課題として学ぶ学生の時とは違って、大人になったらあえて目的を持たないと学ぶ機会がありません。目的を持って学ぶことの喜びは強烈でした。
それが命の事だったら尚更、夫婦で学べるって本当に楽しい。こんな機会はこの時以外はありえないなと感激しました。将来こういう仕事いいなと、すでに初産の時の両親学級で思ってしまって。
「その時に決意されたのですね」
それでも、それで食べていけるとは思っていませんでした。
それで、できるところからやってみようと思い立って、出産してから郊外に引っ越した時に、「ケセラセラ通信」というニューズレターを書き始めました。
パソコンも今みたいな可愛いフォントは無いから、手書きで。美大出身の強みで、POPとイラストは描けたから。ニューズレターを書いて「子育て中でも勉強しよう」とか、「自然のお産とは」とか。月1回の発行で、ただA4の紙2枚を二つ折りにした8ページだけの物でした。1回目は30部の発行でした。
教習所の育児室のお母さんとか、公園友達のお母さんに配ったりしたら途端に翌月100人の定期購読者が集まったんです。遠方の方には「ご自分の宛名を書いた封書に80円切手を貼って送ってくください」とお知らせしました。こうしてネットワークが出来ました。
当時は家庭用FAXも無くて、もちろんインターネットも携帯も無い時代でしたが、でもこうやって仲間が増えるのかって事を実感しました。
「活動の輪が広がり始めたのですね」
その楽しさを知った私は、お母さんを集めてお産情報のニューズレターを作ったり、託児付きの大学教授呼んでの勉強会を企画したり、カラーアナリストがいない当時に、カラー講座を企画したり。子育てしながら出来るネットワーク作りを始めました。
もちろん、たくさんの事をやってきて、たくさんの事を失敗してきました。だからこそ、できることもあるなあって思います。
私は、絶対自分から生まれてきてる子は相性100%なんだと信じています。自分が好きだと思う事をして、自分が自分で良いということを幸せに生きてる大人を身近に見せてあげるのが子供へのギフトじゃないかと。勝手なんですけど(笑)。
で、「お母さん幸せ。今日すごく良いことあったんだよ、聞いて、聞いて」って子供に聞いてもらって「良かったね、お母さん」って言われて。
今平均初出産年齢28.9歳ですけど、たとえば30歳で産んだとしてもその先50年人生があるわけですよね。
だから、妊娠してからも、出産してからも、子供の幸せだけに自分を合わせるのではなく、自分自身を幸せにするための行動もちゃんと考えていただきたいと思います。「あなた、それして幸せなの?」ということはよく問いますよ。
「ある意味、革命を起こしておられるのですね。それには賛同してもらえますか?」
完璧な子育てを目指している人達というのは、どちらかといえば「人から見てどうか」といった他者からの評価を気にしてらっしゃる方が多いように思います。まだご自分の事を受け入れる時期に来てない方なんです。でも、それを無理に矯正するつもりもありません。
自分自身の経験で「こんなに努力をしてもダメだ」というところまでいけば、ちゃんと我に返るから。その手助けとして、「ちゃんと緩んでる?」「緩むと色々なものが見えてくるよ」と声をかけています。「あなた評価気にしすぎだよ」って言っても解決しないし、頑張っている事実は評価したいし。
「それで自分がうれしいと思ったらどんどんやったらいいよ」「完璧に!と努力していられるうちはがんばって!」と私は思います。途中で止めないです。その人の人生のプログラムだから。その人が分かることになってる事だから。
私は無理矢理方向転換をする役割ではないと思っています。その人が本当に幸せと感じる方向を探しながら紆余曲折している時に、話を聞きながら「いいんじゃない、いいんじゃない」と言いながら寄り添う係だと思っているのです。
「出産に限らず生き方そのものでも、『こうしなければいけない。けど私は出来てない』罪悪感を感じてる方は多いように思います。そんな方にメッセージをお願いします」
手を抜いてるな、がんばらなきゃって罪悪感を感じるのでしたら、手を掛ければいい。でもやっぱり限界は体得してくると思います。だからこそ、できるうちはやってみるのもいいんじゃないかな。その先に「正しさに翻弄されないでいいんだよ」という価値観が見えてくるはずだから。
育児の面でも育児が上手になるのは育児をしていくしかないですよね、本当に。
幸せな夫婦って結婚した瞬間、すぐに幸せな夫婦になるのではありません。「僕らはこれから愛し合ってみようと思いまーす」という宣言が結婚でしか無いのですから。
「一緒にいれてうれしいな」という時間をどれだけ重ねることができるのかとか、いっぱい喧嘩して、でもそのあと仲直りして、そうやって向き合うっていうことがパートナーであったり親子であったりすると思います。
向き合ってもいないでパーフェクトないい親とかいい夫婦とか有り得ないですよね。向き合えば向き合うほど時間を刻んだ時に一喜一憂したことや、決意したことや、気づいたことが刻まれて行って自信になっていくわけです。
あんまりにもみんな急ぎすぎ(笑)。パーフェクトのパッケージを瞬時にして手に入れるのが豊かさだと思ってるのかもしれないですね。
お産にしても、大きい子はゆっくり時間を掛けてきて生まれたいし、そうなると時間がかかります。三日掛かっても安産ってあるんですよ。それなのに、時間が短ければ安産、長くかかれば難産だと思われていますよね。
それは自分の心を込めてやりたい仕事でも、NPO活動でも、ボランティアでも、全部当てはまると思います。時間をかけなければ、愛だって成熟していかないんだし。それなのに「付き合ってもう3ヶ月、じゃプロポーズ促進剤」って変でしょ。適齢期だからって結婚促進剤って変でしょ。
お産の陣痛促進剤をむやみやたらと使う考え方と似たようなものを感じます。明らかに変ですよね。「最短時間で最大効果」というビジネス論理を、人の心とか、男女や親子の愛とか、そういう人間関係や家族に持ってくるのは対極にある尺度だから合わないのですよ。
最短時間で最大効果の出せる母になろうとか、最短時間で最大に愛される女性になろうなんて無理なんです、絶対。
私は最初からそんなこと求めたくないなあ。遠回りになることや無駄に思えることでも、その時その時来てる人間関係や、出来事、ピンチや悲しみすらも「今日これが最善のご縁なんだ」って思えることって大切ですよ。
<編集後記>
先生は、本当に華がある方です。話をうかがっていると、内側から滲み出る温かい光のようなものを感じることができました。
テレビ番組の出産シーンの監修や、セミナー開催、全国をまたにかけた講演活動に執筆と精力的に活動されているので、大葉先生にお目にかかる機会は多いと思います。その全てにおいて私たちが取材で感じることができた光は目にすることはできるのではないでしょうか。
「大葉先生のファンなんです」という声は多く聞きます。その中では著名人も多く、女優のともさかりえさんも、大葉先生のマタニティクラスで学びました。漫画家である桜沢エリカさんも、マンガ作品の中で大葉先生を紹介しています。皆さん、大葉先生の光を感じられた方なのでしょう。
あなたも、それを感じてみませんか? まずは著作からでもいかがでしょうか。
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