「最近<自己実現ができていない、満足感がない>という人が増えています。」
今、自己実現しなきゃという、「自己実現症候群」みたいなものがあるのではないでしょうか。
いわゆる成功というイメージがあって、そのイメージを生きられないと、自分はダメなんだと思い込む。
100人中5人しか実現できないような生き方を自己実現と呼んで、それができていないと、何か自分が欠けているような、損をしているような感じになってしまう所があるのではないでしょうか。
特に女性に対してはそういう印象を持っています。30代の女性などは、キャリアウーマン、専業主婦、どちらを選んでも負け犬っぽい雰囲気がありますよね。
そしてその両方を選択した人は、援助の体制がないと超多忙となり、自分の為に生きているという実感が感じられなくなる。
彼女達が、満たされていないという思いに陥りやすいのは、一方では、いわゆる社会的な自己実現を、また一方ではいい奥さん、いいお母さんになることを求められ、これらを全部やらないと何か欠けてしまっているよう感覚を持ってしまうから。
時代の端境期だからですね。今価値観がシフトする時で、古い価値観も残っていて、新しい価値観もあるから、どっちも満たさなければいけないと思ってしまうと、どっちもやらないとパーフェクトではないみたいな、辛い時代です。
男性も、終身雇用があったらいいのにと思うけれども、今はもう能力主義みたいになってしまって、自由に働く人が出てきた半面、恐々としながらやっている人も多いです。
だから鬱の人がこんなに多くなるのでしょうね。
「先生にとって幸福とはどういうことですか?」
幸福は、求めたら逃げていきます。
幸せになろうと思って求めていったら、まだ足りない。むしろ本当の幸せというのは、幸せになろうとして手に入るものではなくて、自分というものを忘れて、自己忘却している時の事ではないでしょうか。
幸福と自己忘却は、セットだと僕は思うのです。本当に幸せな時というのは、幸せになろうなんて思っていない。幸せではないから幸せになろうと思うのであって。
「本当に満たされているなあ」「幸せだなぁ」、としみじみ感じる時は、そんなに幸せになろうとしていませんよね。幸せとは何かを考えません。我を忘れて、それを楽しんでいるのです。
だから逆に、幸せのためにこれが必要だと、ガツガツし始めたら、足りない所ばかりが見えてきて、不幸になってしまう。
「幸福のパラドックス」というのは、幸せは求めれば求めるほど逃げていく、というからくりです。
「先生は孤独の大切さを訴えると同時に、支え合いのネットワーク作りにも力を注いでおられますね」
トランスパーソナル学会もそうですが、その他に「気づきと学びの心理学研究会<アウエアネス>」という研究会を作っています。
これは宗教ではない所で、アウエア(気づき、覚醒)を目指す人達の、ゆるやかなネットワークができたらいいなという思いで作りました。
気づきと学び、深い自己成長のための、たのしく勉強できるワークショップを年に数回、開催しています。
カウンセラーの方、カウンセラー志望の方の他、教師の方、医療関係の方、そして、自分をより深く、より自分らしく生きようとしている一般の方々もたくさん参加しています。
参加希望の方は、私のHP「諸富祥彦のホームページ」
をご覧いただくか、 「アウエアネスへのメール」 にてご連絡ください。
宗教でもいいのですけど、今はそこに入れない人達もたくさんいるでしょう。
ここでは特定の教義を信じなくてもいいし、お布施もしなくていいし、勉強会に参加してもらって、お互いが自分の心に耳を傾けあえるような、つながりを目指しています。
アウエアネスへの旅を自分一人で頑張るというのは、なかなか難しい。
今の日本人の場合、まだ誰かに頼って、すがって生きていこうとする所があります。
そうではなく、自立しつつも、自らの魂の覚醒を目指していくという学びを、普通の人が、お互いに支え合っていく、そのきっかけとなるようなネットワークをこれからも作っていきたいと思っています。
そして僕はもう一つ、「教師を支える会」というネットワークも作っています。
学校の現場では、学級崩壊、いじめ、不登校生徒の増大、学力低下など問題は山積みでまさに「教師受難の時代」です。体調不良や、鬱病で、休職あるいは退職に追い込まれる先生も少なくありません。
現在は1ヶ月に一度、教育関係者の為のグループカウンセリングとコンサルテーションを行っています。
「自分が悩んでいるから心理関係の仕事をしたいという方も多いと思いますが、それについてはどう思われますか?」
それを否定する人も多いのだけれど、僕はそうは思いません。僕もそうだったし(笑)。
人の内面性を見つめるということは同時に、自分の内面性を見つめることであり、それはどこかで自分がきつくなるということが当たり前に起こってきます。
たとえ自分の問題が100%解決していなかったとしても、それに振り回されないだけの距離がしっかり取れているかどうかという所が、鍵になるのではないでしょうか。
そうでないと相談に来た人を犠牲にしてしまいますから。
「最後に、現在悩んでいる人に対して、一言お願いします。」
無理して自分を好きになろうとしないことですね。
そういう時は、自分を励ますと余計落ち込んでしまうから、自分の中の落ち込みとか、疲れとか、モチベーションの低下を認めてあげること。無理にモチベーションを上げようとしなくていい。
一生懸命頑張りすぎないのが一番です。
好きになれないなら、なれないでいいので、自分のことを好きになれない自分をあるがままに受け止めていく。自分なんか死んでしまえば良いのにと思っている自分を、ただそのまま認めていく。この連続だと思います。
今、自己実現とか、ポジティブシンキングとか、好きな人多いですよね。ポジティブシンキングというのは、逆にネガティブなのです。
何故かと言えば、前向きになれない自分はダメだと、自分を認めていないですよね。どんな自分も、自分の大切な一部として、自分なりに認めていく事がまず一番大事だと思います。
<編集後記>
先生のお話を伺って、スピリチュアル、自己実現、孤独、幸福について改めて考えるきっかけになりました。
自分のマイナス感情を認めてあげること、それは弱いようでポキッといかない強さになる。
孤独を知れば知るほど、人とのつながりの大切さがわかる。
「どんな人生にも意味がある」。フランクルのこの言葉を、ギリギリの所にいる人達、傷ついた人達へ、熱い思いと共に様々な形で発信している先生の活動は、もはやカウンセラーという立場を凌駕しているように感じました。
|